メニュー

第二大臼歯の保存はなぜ難しいのか?その原因と対策

[2024.04.24]

第二大臼歯とは親知らずの一つ前にある奥歯のことです。上下左右で4本あります。

12歳の頃に生えてくるので12歳臼歯とも呼ばれています。

(親知らずを除けば)この歯は一番奥で、大臼歯と言われるだけあって大きな臼のような働きをします。機能についてはいろいろありますが、なんと言っても食事の時に奥歯でしっかり噛むということが大きな役目でしょう。噛むということについては第一大臼歯が最も大きな役割を果たしていると言えますが、大臼歯という同じ種類の歯だけあって、第一大臼歯に次ぐ働きをしています。

日々頑張ってくれているにも関わらず、第二大臼歯は他の歯に比べて少々特殊な環境にあります。保存に不利な環境にある歯と言ってもいいかもしれません。

どのような点において保存に不利なのかと言いますと

・奥にあるので歯ブラシが届きにくい

・親知らずの生え方によっては治療が大変難しい部位がむし歯になってしまう

・親知らずを抜いた後に比較的深いポケットができることがある

・萌出量が比較的少ないことが多い(歯ぐきから出ている歯の頭の部分が少ない)

・噛み締めや普段の歯の接触などの力の影響を受けやすい(ヒビが入りやすい)

・(下の第二大臼歯は)歯の根の形態が特殊な場合がある

・外科の方法が特殊(意図的再植)

まだあるかもしれませんが主なものは挙げることができていると思います。

それぞれについて見ていきましょう。

・奥にあるので歯ブラシが届きにくい

これは誰もが自然に理解できることだと思います。前歯は入口に近いから歯ブラシが当てやすい。第二大臼歯は奥だから歯ブラシを当てにくい。当てにくければ自然と磨き残しも多くなってしまいます。

顎がつらくてお口が大きく開けられない方や、嘔吐反射(オエっとなりやすい)がある方は尚更ですね。同じ理由で歯科治療がしにくい場所であるということも挙げてもよいと思います。

 

・親知らずの生え方によっては治療が大変難しい部位がむし歯になってしまう

聞いたことがある方も、実際経験なさった方もいらっしゃると思いますが、第二大臼歯のさらに後ろに親知らずが出てきて第二大臼歯との間にものが詰まりやすい状態を作ってしまうことがあります。それで親知らずだけがむし歯になるのであればまだ良いのですが、第二大臼歯との間にものが詰まりやすいことが原因でむし歯になるとすると、たいていは第二大臼歯も巻き込まれます。親知らずの生え方によって一つ前の歯も巻き添えを食ってしまう可能性があるということです。

親知らずとの間でむし歯になってしまうのは第二大臼歯の奥の面ですから、お口の入り口からは最も遠い部位、つまり喉に一番近い部位ということになります。この場所にはまず器具が届くかどうかという問題もあり、また見えにくい場所でもあります。スペースがないので器具を動かせる範囲にも大きな制限があります。ですので正確な治療が大変難しい部位と言えます。

これらに加え、オエっとなりやすい(嘔吐反射の出やすさ)、お口が開けにくい(顎関節症など)などがあるとさらに治療は困難になります。意外かもしれませんが、奥歯の治療となると頬が硬いか柔らかいかどうかも治療のしやすさに関係してきます。また、治療の際は皆、仰向けになっていますから重力の関係で喉の方へ唾液が流れてきます。そうすると治療している部位に唾液がつきやすいのです。歯科治療を行う際には乾燥が必須です。工作をしていても水で濡れているところに接着剤はつきませんよね。それと同じです。第二大臼歯は唾液で一番濡れやすい部位といえます。

・親知らずを抜いた後に比較的深いポケットができることがある

一つ前の項目でご説明しましたが、変な方向で生えてきてしまった親知らずがあり、それを抜いたとしても親知らずの生え方によってはその部分に比較的深いポケットが残ってしまうことがあります。ここの清掃環境がよくないと大変な思いをして親知らずを抜いたにもかかわらず歯周病に発展していく可能性もあります。清掃ができているのかどうか、歯周ポケット内に歯石などがついていないかのチェックは必須と言えます。

 

・萌出量が比較的少ないことが多い(歯ぐきから出ている歯の頭の部分が少ない)

萌出量とは歯ぐきから出ている歯の頭の部分のことです。意外かもしれませんが、この部分は人によってかなり差があります。背の高い人もいれば低い人もいると考えてもいいかもしれません。それが保存にどのように関係あるのかというと、かぶせものなどの治療がしにくいということが挙げられます。かぶせものをするとなると、適切な厚みを取らなくてはなりません。歯に帽子を被せるために(最低限ですが)一回り削らなくてはならないということです。その時に歯の萌出量が少ないとかぶせものが、浅く帽子を被った状態で出来上がってしまい外れやすくなってしまうことがあります

 

・噛み締めや普段の歯の接触などの力の影響を受けやすい(ヒビが入りやすい)

前項で挙げた、かぶせものが作りにくいという理由で、かぶせものを作らず「フタだけして経過を見ましょう」となるとこれは簡単で良いは良いのですが、かぶせものに比べて強度を得にくいということがあります(もちろんフタをする選択肢が適切な時もあります。)

第二大臼歯は奥歯なので、それだけ日々大きな力がかかっています。そうなるとヒビが入ってしまっていることも多いのです。

奥歯が痛いと患者さんがいらして、見てみるとむし歯や歯周病などの異常はない。もっとよくみると第二大臼歯の奥側にヒビが入っていて、それが神経まで達して痛みが出ていることがあります。その前の状態(小さなヒビが入っている状態)は珍しくもなんともなく前歯、奥歯問わず色んな歯にヒビは入っています。これを読んでいるあなたの歯にも、小さなヒビはきっとあります(脅すような表現ですみません)。小さなヒビは治療の対象になりませんから安心してください。

むし歯、歯周病に縁のない方でもヒビに無縁な方はほとんどいません。折に触れ、話題にあげるヒビの話ですが、これについては長くなってしまうのでまた別の機会にお話しさせていただきます。

 

・(下の第二大臼歯は)歯の根の形態が特殊な場合がある

むし歯やヒビがある程度進んでしまうと、神経の処置(根管治療)が必要になってくることもあります。

根の治療を成功させるには根の中の可及的な無菌化がキーポイントになります。

要はどれだけきちっと歯の中のお掃除ができるか、ということです。

歯の中のお掃除をするには掃除する場所が単純であればあるほどやりやすいです。部屋の掃除も、部屋ができるだけ単純な形をしていた方がやりやすいですよね。

下の第二大臼歯には樋状根というアジア人に比較的多く見られる特殊な歯の形態があります。毎日の診療で私もよく見ます。レントゲンを見て、ああ樋状根だな、と思うくらいで驚くほどではありません。

ここの根の治療の仕方は根の形態がイレギュラーな形なので、あらかじめ形態を予測して道具を用意しておかないと難しいということがあります。根の形態を予測して治療しないと、歯が極端に薄いところができてしまう治療になることもあります。そこが新たに破折のリスクが高い場所となってしまう可能性もあります。

また前に挙げた通り、お口が開きにくい方、嘔吐反射が出やすい方も治療に影響が出やすいと言えるかもしれません。

 

・外科の方法が特殊(意図的再植)

前項で根管治療の話をしました。根管治療の成功率は100%ではありません。それでうまくいかなかったときにどうなるかというと、保存を考えるとまず根管治療のやり直しか、根管治療の外科が選択肢となると思います(場合によっては放置、抜歯も立派な選択肢であると思います)。

根管治療は基本的に回数を増すと成功率は下がっていきます。何回かやればそのうち1回はうまくいくかもしれないというものではありません。そうなると外科が選択肢になります。この外科が第二大臼歯では特殊です。

意図的再植と言います。本筋から離れてしまうので術式自体を詳しく説明するのは避けますが、これは歯を抜いて処置をして元の位置に戻すという手術方法です(もちろんその日の手術の時間内に戻します)。この「歯を抜いてくる」というのがポイントです。歯を抜いてくるときに歯が割れてしまったりかけたりしてしまうこともあります。ですので意図的再植は、もうこれより他に手段はないというときに選択する最終手段なのです。

 

ではどうすれば良いのか

ではどうすれば良いのか、ここが重要です。

・まずブラッシングについては、磨き残しが出ているのか出ていないのか、歯科医院でチェックしてもらうと良いでしょう。また通常の歯ブラシだけだとしっかり磨くのが難しいので、補助的な器具(フロスやタフトブラシ)などの使用を考えてもいいと思います。もちろん使い方のアドバイスも歯科医院で受けましょう。主に砂糖の取り方など、むし歯にならないような食習慣、口腔内環境づくりも重要です。歯科医院での定期的な(概ね4ヶ月から6ヶ月目安 症状やしすくによってはもっと短くなることもあります)チェックも受けると良いと思います。

・親知らずについては第二大臼歯に迷惑をかけるような形になっていないか歯科医院でみてもらうと良いと思います。場合によっては親知らずを抜くことも考えましょう。

・また、むし歯だけではなく、歯周ポケット、歯のヒビについても見てもらうと良いと思います。歯のヒビについては毎日の力のコントロールについても考えなくてはなりません。ご自身にどれほど力に起因するリスクがあるのか、就寝時のマウスピースの使用を考えた方が良いのかも歯科医院で判断してもらった方が良いと思います。

どの歯も等しく重要なのは間違いありませんが、他の歯に比べて少し保存しにくい環境にある第二大臼歯についてお話ししました。何かの参考になればと思います。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME