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歯周病(歯槽膿漏 しそうのうろう)の治療・予防

(この記事は2021/10/12現在更新中です)

歯周病(歯槽膿漏)とは、お口の中の細菌がきっかけとなり歯を支える骨(歯槽骨 しそうこつ)が溶けてしまう病気です。歯を支える骨が溶け続ければ歯は次第にぐらつき、最終的には抜けてしまいます。

歯と歯肉(歯ぐき)の境目にある歯肉溝(しにくこう)と呼ばれる「溝」があります。指を出してみて爪と指の間に溝がありますね。そのようなものを想像してもらえれば良いと思います。
ここに適切に歯ブラシを当てないと、歯垢(プラーク)と呼ばれるネバネバとした細菌のかたまりが付着します。そのままプラークがいつもついているような状態が続くと一週間も経てば歯ぐきから出血するようになります。これが歯肉炎(しにくえん)と呼ばれる、歯周病の初期の段階です。

歯垢(プラーク)はそのまま放置すると、硬くなり歯石となります。歯石になってしまうと、ブラッシングだけでは除去することが難しくなります。歯石は歯周病を引き起こす細菌たちの絶好のすみかとなります(「堅牢な要塞」のようなイメージです)。

さらに放置すると、溝が病的な深さ(概ね4ミリ以上)となり、歯を支える土台(歯槽骨)が溶けていきます。


全身との関わりについて(大変重要です)

最近、テレビや新聞などでよく取り上げられてきていることですが、歯周病(歯槽膿漏)は単に歯がゆれてくるということだけにとどまりません。口の中の細菌が全身の健康に影響するという科学的な証拠が続々と見つかってきています。
公益財団法人8020推進財団が発行している「お口は万病の元」という冊子によると、歯周病やむし歯を引き起こす細菌が動脈硬化を引き起こし、脳血管障害、心臓血管障害、また認知症、糖尿病、低体重児出産・早産とも関係あると言われています。動脈硬化の引き金になるということは、血管はご存知の通り全身を巡っていますから、身体中の様々な臓器に関係があると言っても過言ではありません。今わかっていなくても、これから明らかになってくることも当然あると思います。

歯周病のなりやすさというのも個人差があり、一所懸命にケアをしていても歯周病が進みやすい方もいらっしゃいます。

皆様に共通するのは、どのような場合にせよ「お口の中の細菌はなるべく減らしておいたほうが良い」ということです。

私が皆様によくお話しすることは、お口は体の中のようで外、外のようで中であり環境の変化も激しく、ブラッシングや食習慣などの生活習慣に大きく影響を受ける部位と言えます。
影響を受けやすいということはよくない習慣の影響を受けやすいということもありますが、その反対に良い習慣の影響も受けやすく、お口の中は他の臓器と違ってその気になれば、歯ブラシや歯間ブラシを使って今の今からでもケアできます。しかも特殊な状況を除き、ブラッシングの効果は観察していると一週間もあれば目に見えて出てきます。適切なブラシやブラシの当て方を知ることによってさらに効率よく磨けるようになります。

治療について

歯周病は、予防・治療が十分可能なものになっていますが、先にもお話しした通り重症化しやすい方もいらっしゃいます。歯周病を引き起こす細菌や、炎症反応の特殊性などから個人差が生まれると考えられています。重症化しやすい方も、その進行を可能な限り緩やかにし、状況にあった治療をしてお話やお食事などうまく機能させていくことは可能です。

当院では、歯周病の治療だけでなく、定期的なクリーニング、歯垢(プラーク)の除去、歯石の除去、予防指導などをおこなっています。
特にブラッシングや歯間清掃は、モチベーションを高く保つのが難しく(私もだらけそうになります)定期的に見させていただくことにより「よし、また気合を入れて磨いてみようかな」と思っていただく意味もあります(私も健康についてのテレビ番組など見ると「よしやってみるか」とやる気がみなぎってきます)。もちろん磨くのが難しい部位のプラークを定期的に除去するという意味もあります。

歯周病の初期は基本的に無症状ですのでなかなか自覚は難しいのですが、「ブラッシング時の出血」は皆様に比較的わかりやすく、我々専門家が重要視するサインでもあります。おうちで歯ブラシをしているときに気づいたら当院へご相談ください。

具体的な治療の流れ

まずは問診です。特に糖尿病など歯周病に関連しているような病気をお持ちで無いかどうか、そして喫煙などの習慣がないかどうか、またご家族に歯周病で悩まれた方がいないかどうかなどもお伺いいたします。必要であればどのような歯周病菌がいるのか細菌検査をご提案することもあります。

どのような治療のゴールを希望していらっしゃるのか「どうなりたいのか」も非常に重要な点です。

次にお口の中の検査です。食いしばりなどの習慣がないかどうか、歯周ポケットの深さや骨の溶けている状況がどの程度なのか、ブラッシングの妨げになるようなつめものやかぶせものがないかどうか、唾液はちゃんと出ているかどうか、ブラッシングをどのような器具を使い、いつどのように磨いていらっしゃるのか、実際どの程度磨けているのかなどを調べます。

そして、ご自身のレントゲン写真や説明用の動画を見ながら歯周病の基礎知識についてお話しします。歯周病についてある程度の知識を持ってもらい、できれば基本的なレントゲン写真が読めるようになっていただきたいと考えています。現状どの程度磨けているのかも知っていただくために、プラークの染め出し液なども使いながら、我々と患者さん双方にとっての現状の把握を行います。ここは大変重要なところですのである程度時間をかけつつ、現状の把握と、歯周病の理解のための知識の補充を行なっていきます。

ご自身である程度ブラッシングができるようになったところで歯石取りに入ります。歯石と言っても、例えば歯と歯ぐきの境目から8ミリの歯周ポケットがあったとして、1ミリのところにある歯石と、8ミリのところにある歯石ではとる難易度がまるで違います。
比較的浅いところにある歯石については麻酔などを使いながら、キュレットという道具を使って根の表面から歯石をこそげ取ります。
では深いところにある歯石はどうでしょうか、8ミリのところにある歯石は少し極端な想定ですが、麻酔をして歯周ポケットにキュレットを入れたところでなかなかこそげとることは難しいでしょう。

となると次の手段は「歯周外科」です。歯ぐきを開いて手術を行います。
手術と聞くと非常に恐ろしいイメージですが、私は例えとしてよく骨の中に埋まっている親知らずを抜いてくるよりかは余程マシです、といいます(もちろん術式により程度の差はあります)。身の回りに「歯周外科を受けた」という話はなかなか聞かないかもしれませんが「親知らずを抜いた」という話はわりと聞く部類のことだと思うからです。やはり少しでも身近なことと比較しないとイメージもしにくいのではと思います。
歯周外科によって、通常ではとても見ることも器具を到達させることもできない部分の歯石、炎症を起こしている組織を除去し、その後ブラシがしやすいように骨のかたちを整えることや、また場合によっては骨の再生を促すような薬を使うことが可能になります。

外科によってひとまずの解決を見た後は、その状態を維持できるように家でのブラッシングと歯科医院での定期的なプロのケアによって病状の安定を図ります。

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