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酸っぱいものが歯に悪い?(酸蝕症の話)

[2024.02.12]

酸蝕症(さんしょくしょう)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

歯が溶けるというと皆さん「むし歯」を連想しますよね。でも、むし歯でなくとも歯が溶けることがあります。

特に(細菌が原因でない)酸によって歯が溶けてしまう病気を酸蝕症と言います。

細菌の出す酸が原因でないとしたら、その酸はどこからくるのでしょうか。

主に「食べ物や飲み物に含まれている酸」が原因です。他には「胃酸が口の中に出やすかったりする」と胃酸が原因となることもあります(逆流性食道炎)。

初めは無症状で経過しますが、エナメル質がかなり薄くなってくると、内部にある象牙質と言われる部分の色が目立ってくるため少し黄色みまたは茶色みを帯びたような歯の色になり、前歯であれば歯が薄く尖ってくるような感じがあったり、奥歯であればもともと歯にある山の部分が低くなりクレーターのようなものができることもあります。

象牙質がお口の中に露出するようになると、冷たいものがしみたり、噛んだときの刺激を感じるようになることもあります。

さらにすり減りが進むと神経までの距離が近くなり、自然と神経が働かなくなってしまうこともあるのです。この場合は根の治療とかぶせ物が必要になります。

酸蝕症の歯は、歯ぎしりやブラッシングの力の影響を非常に受けやすくなります。

酸の影響を受けている状態で歯が脆くなっているところに、歯ぎしりなどの力、ブラッシングなどによる力が掛け合わされることによって、大きく歯が減ってしまいます。酸蝕症そのものだけでは大したことはなくても、他の要因が掛け合わされることにより、歯が大きく減ってしまうということが起きると言われています。

ですので、むし歯のリスクが低い状態でも、酸蝕症の傾向がある方は、ブラッシングや噛み締めなどの力のコントロールをすることが非常に重要となります。

原因について

では原因について少し詳しくご説明いたします。

胃酸の場合は消化器内科等との連携が必要となり、歯科単独で対応することが不可能なので、今回は例外としましょう。

ここでは飲み物と食べ物の酸について述べます。

飲み物について酸性の強さを評価してみましょう。歯の表層にあるエナメル質を溶かすくらいの酸を基準にしたいと思います。

まず炭酸飲料(ジュース)です。これは砂糖が入っているのでそれによるむし歯のリスクもあります。その上、酸が強いのです。では炭酸が抜けると酸性度が低くなるかというとそうではありません。強い酸性が維持されます。これは炭酸ではないクエン酸やリン酸が含まれているためです。スポーツドリンク、乳酸菌飲料もリスクがあります。ただただ甘い味では飽きてしまいますよね。そこに少し酸味があると甘みが引き立つので、酸で味を調整するということがあるのだと思います。

酸そのものでも歯が溶けて、さらに砂糖によるむし歯の可能性という、二重にリスクを負うことになります。

次にお酒です。柑橘系酎ハイ、柑橘系サワー、なんとワインもリスクになります。

そのほか、柑橘類(フルーツ)や、柑橘類のドレッシング、お酢類(お酢ドリンク含む)が挙げられます。これは女性の方に割と多い印象があります。お酢類などは健康に良いということで続けいらっしゃることも多いです。健康のためなので、習慣として続くということもあります。良かれと思って続けていることなので盲点になりやすいところでもあります。

飲み物では市場にあるものの75%がエナメル質を溶かす程度には酸性ということがわかっています。かなり多い印象ではないでしょうか。

 

(神奈川県歯科医師会HPより画像引用)

家でできる対処法について

次におうちでできる対処法についてお話しいたします。

先ほどの飲み物についてのお話で「じゃあ何を飲めばいいんだ!」と言いたくなりますよね。

水、お茶、牛乳(豆乳も)は酸という意味で歯に影響ありません。

そんな味気ないもの子供じゃないんだからというお話もごもっともです。

そこで飲み方が重要になります。まず水分補給の目的で水分を取るときは、水、お茶がおすすめです。

健康目的で飲んでいるお酢ドリンクなどの場合はストローを使って飲むことにより、液体を歯に触れさせず喉の方に流し込むという工夫も対策の一つです。

他にはCa-F配合のガムを噛むという方法があります。噛むと唾液が出ますから飲み物をちょびちょび飲んだりということの緩和にもなりますし、ガムにより口腔内にカルシウムイオンとフッ化物イオンを補充することにより、ガムから唾液の中に移動したカルシウム、フッ化物イオンが歯に取り込まれ再石灰化するという環境を作ることができます。口さみしさで色々な飲み物食べ物を口にしてしまうことを減らす効果もあると考えます。

酸蝕症はむし歯を引き起こす菌によるものではないので、いわゆる「砂糖のコントロール」プラス「フッ素(フッ化物)の使用によるむし歯予防」という対処方法が効きません。生活習慣についての介入、または処置です。

酸蝕症と言ってもまだエナメル質のみにその兆候が見られる程度であれば、酸蝕の原因となっているものや習慣をおうかがいして、対策を考えます。またブラッシングについてもなるべくすり減りが出ないような方法を提案します。

歯科医院での対処について

続いて歯科での対処です。

象牙質が露出することによりしみる症状が出ているところには、第一選択としてコンポジットレジン修復(歯の色と同じような色をしている光硬化型ペースト)でコーティングするということになります。噛む面がすり減っていて、また広範囲となるとコンポジットレジン修復は現実的ではありません。奥歯だと今後必要な強度も合わせ考えると、かぶせものが必要となることもあります。かぶせものをするとなると歯の周りを一層削ることにもなりますし、現状の困っている度合い、メリットやデメリットなどを天秤にかけてよく話し合って決めていくことが大事だと考えています。

 

(本記事を作成するにあたっては「知る・診る・対応する 酸蝕症」クインテッセンス出版を参考文献として使用させていただいた上、著者の考えを述べております。)

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