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読売新聞の記事より(子供の生活習慣病 小学生の糖尿病リスク)

[2024.01.09]

 読売新聞の記事にこのようなものがありました。昨年のうちにブログにまとめたかったのですが遅くなりました。

香川の小4、糖尿病リスク過去最悪16%…コロナ禍の運動不足が原因か(2023/12/20 読売新聞オンラインより)

 香川県では「小児生活習慣病予防健診」と銘打ち、以前から(中学1年生と小学4年生で、小学4年は2012年度からだそうです)調査をしていることは有名です。調査も血液検査と、食事や運動など生活習慣のアンケート調査も行っているという本格的なものです。この調査のことを初めて知った時、小学生で血液検査もやるのか、と驚きました。子どもたちのことを考えた英断であると思います。

 今回の検診結果によれば、糖尿病となるリスクが高い割合は小学4年が過去10年で最大の16・2%(前年度比3・9ポイント増)だったそうです。

 当然ですが、これは香川県の小学生が特別不健康と理解するのは適切ではないと思います。他の都道府県で調査してもそれほど違わない結果が出るのであろうと想像します。

 小学校の1クラスの平均人数を25人くらいとすると(この数字はアバウトなものです。事実に即していなかったらすみません)およそ4人が将来、糖尿病となるリスクが高いと言えるということになります。この数字を皆様どう考えますでしょうか。

解釈その1・この傾向は今に始まった事ではない。昔でも血液検査をすればこのくらいの結果になったはずだ。

解釈その2・コロナ禍の運動不足が原因だということなのであれば、その状態は脱しつつあるのだから、特に心配になる必要はない。

解釈その3・元記事によれば中学1年生時では近年ほぼ横ばいなのだから、第二次性徴を迎えれば結果もよくなる。

これら3つの私が考えた解釈は少々楽観的かなと思います。

 あくまで専門家ではない個人的な感想ですが

・今までは中高年が悩んでいた生活習慣病が子どものものにもなりつつある。

・生活習慣病は遺伝的な要因をのぞいて、食事、運動、睡眠の三本柱から考える必要がある。

このように考えます。

 現代の小学生はとても忙しい、特殊な環境にあるというのはよく言われることです。とりわけ都内であれば塾をはじめ習い事も多く、防犯上の安全面や、昨今の感染症の観点からも子ども同士、外で気兼ねなく遊べるという感じでもなくなり、また公園も空き地も、ボール遊び含め自由にもなりません。「自由に外遊びができない」プラス「誘拐などのリスクが低いこと」を考えると家でゲームやYouTubeの方が無難で、何よりとても面白いというのもまさにその通りだと思います。

 昔より今の子どもの環境の方が良くなったところもたくさんあると思いますが、ひとまずこのように考えました。

 塾や習い事でストレスを抱えたりとなると、食事には栄養面だけではなくストレス解消の面も多く求めるようになると思います。頑張るためのモチベーションとして使うこともあるでしょう。

 外で動かないとなれば、あまり体が疲れず自然な食欲が湧きにくく、特においしいものでないと嫌だという理屈も一理あるかと思います。

 また動かないと自然な眠気が起こりにくくついつい夜更かしをしてしまい、生活リズムが遅く遅くへスライドしていってしまうということもあると思います。元来、人間は早起きよりか夜更かしの方が得意ということもあるでしょう。

 ストレス解消、さらにおいしいとくると、自然と油や砂糖、塩分が多いものを選んでしまいます。これはもちろん大人にも(私にも)言えることでストレスを抱えているとダイエットがうまくいかない(ついつい高カロリーのものを食べ過ぎてしまう)という極めて日常的な現象です笑。

 生活習慣病の予防としての考え方に、伊藤裕先生が提唱されているメタボリックドミノという言葉があります(図は慶應義塾病院の医療健康情報サイトから引用させていただいております)。

 この図は川の絵だと思ってください。絵の上の方の川の上流から絵の下の方の下流に川が流れているようにとらえていただくと良いと思います。図の下の方には重篤な病気や状態の名前が並んでいますよね。それも元を正せば(上流の方へ戻れば)生活習慣から始まっているんだよという考え方です。

 「大河の流れも一滴の雫から」という言葉がよく似合うと思います。

 今回の小学4年生の血液検査の結果が「一滴の雫」とすれば、これが流れに流れて中年以降で「大河」にならないために、どのようなことが推奨できるかを考えてみました。あくまで私の専門は歯科ですので、その辺りは取捨選択していただければ幸いです。

1運動 健全な食欲、睡眠を促すためにも運動は必要と考えます。子供が健康のためにマラソンや筋トレとは考えにくいので、やはり遊びとして取り組むのが適切でしょう。子供が興味を持てば、習い事などでスポーツに取り組むのはとても良いのではないでしょうか。子供は生活習慣(食事、運動、睡眠)に気をつけなくたって健康だろうと考えるのは適切ではないということは覚えておいた方がよいように思います。

2睡眠 成長やメンタル面を安定させるためにも睡眠は重要だと考えます。イビキなどがある場合には、子供にも睡眠時無呼吸や睡眠障害があることを頭の片隅に置いておいても良いでしょう。

厚生労働省の「第2回 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会」の資料によれば

・ 1-2歳児は11-14時間、3-5歳児は10-13時間、小学生は9-12時間、中学・高校生は8-10時間の睡眠時間を確保
することを推奨とあります。

小学生は最低ラインで7時に起きるとすると10時就寝が望ましいということですね。中学受験生にはなかなか厳しいかもしれませんね。睡眠は肥満とも関連すると言われていますから生活習慣病と無関係ではありません。

3食事 歯科の立場から提言させていただくと、食事については砂糖の摂取量をいかにコントロールするかということが非常に重要になります。小学生については特別な日の食事といつもの食事(ハレとケ)を分けることが良いのかなと考えています。

 現代の生活で砂糖を排除していくことはとても難しいことだと思います。お菓子とジュースを取らなくても調味料にもたくさん使われていますから、どう付き合っていくかという問題であると考えます。幼い子を持つお母さんがどんなに気をつけていても、悪い意味ではなくいわゆるママ友(保護者同士の)とのコミュニケーション(おやつ交換を含む)はいつか必ずやってきます。その時にはありがたく頂戴し「ありがとう。美味しいね」で終わるのが一番良いのではと思います。週末の外食であったり、またおじいちゃんおばあちゃんとの団欒も、ジュースまたはケーキがあると尚、楽しいのではないでしょうか。素敵な思い出にもなると思います。

 私が重視したいと思っているのは「毎日のこと」です。つまり水分をとるように砂糖入りの飲料を飲んでいたり、手を伸ばせばいつでもお菓子が食べられる環境というのは見直しが必要かと思います。様々な意見があるとは思いますが、現状、砂糖の量と機会のコントロールが子供の場合は必要かなと個人的には考えています。最近では口腔衛生意識の向上(ブラッシングの普及等)、歯磨きペーストへのフッ化物添加などが功を奏して、むし歯は減りつつあるのでそれはとてもいいことですが、現状むし歯がないからというのは安心材料にならず、将来への生活習慣病へつながる可能性もあるということも知っておくと良いかと思います。味覚などの嗜好形成についても大事な時期だと考えます。基本的に大人になってからの好みも、子供の時の好みが基礎となって出来上がるのではないでしょうか。とは言え、各ご家庭のお考えもあるでしょうからそこはもちろん尊重して、現状に合ったご提案ができればと思います。当院では一律にこのようなやり方が良いと押し付けることは致しません。

 最近のお母さん(保護者の方々)はとても多忙ですから(表現は悪いですが)本意ではないけれども子どもが手っ取り早くおとなしくしてくれる方法を取らざるをえないというところもあるのではないでしょうか。お子さんの幸せを願わない親はいないと思います。毎日本当にお疲れ様です。

 一つの案として、休みの日におにぎりを大量生産して冷凍庫(冷凍庫のスペースに余裕がないご家庭がほとんどだとは思いますが)に入れておいて、朝ごはんやおやつには各自チンして食べてもらう(ちなみに冷凍食品のおいしい焼きおにぎりなどもあります)。忙しい朝は冷凍レンチンおにぎり(またはサトウの切り餅などを焼く)と、マグカップにティースプーンで味噌を入れ、パラパラと乾燥わかめをふってお湯を注ぎ味噌汁というのはいかがでしょうか(ダシをとる必要はないと思います)。それでも常温保存の食パンにジャムを塗って食べたり、買い置きの菓子パンを開けるのにはどうしても手間の面では勝てないと思いますが、極限まで手間を減らして良いのではと思います。ジャムを塗った食パンや菓子パンは、できればおやつ、または特別な日のお楽しみとしてありがたくいただくのがよろしいかと個人的には思います。

 子どもだから健康、たまの怪我や、風邪、インフルエンザに気をつけていればよいというのではなく、大人と同じような点に気をつけなければならないのではないかということを考えさせてくれるよい新聞記事だったと思います。これからも香川県のこの取り組みについては注目していきたいと思います。

 

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