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「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言」を読んで その1

[2021.05.14]

少し前に話題になった「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言」を読んでみました。

疾患横断的エビデンスって何?健康寿命延伸て何?と思われる方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。実のところ私も正確に意味を理解しているか怪しいところです。

上記のページからダウンロードできるPDF資料にある「提言作成の背景」の項目を読みますと何となくですが意味がわかりましたので私の解釈を書こうと思います。読んでいただければ幸いです。

まず唐突ですが、多くの方ができれば長生きしたいと考えているのは疑いのないことかと思います。

そして、長生きするのであればできるだけ健康な状態で長生きをしたいというのも、大方疑いのないことと思います。私も100%同意します。

国のデータを見てみますと長生きかどうかは「平均寿命」健康的に過ごしている期間は「健康寿命」と表現されています。「健康寿命」というのは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されているようです。

そう考えますと「平均寿命」から「健康寿命」を引くと、その数字は日常生活に制限のある「不健康な期間」を示していることになります。

国のデータを見てみますと(画像は上記のサイトよりダウンロードできる資料からお借りしています

平均寿命
2001 年
男性 78.07歳 女性84.93歳
2016年
男性 80.98歳女性87.14歳

健康寿命
2001 年
男性69.40歳女性 72.65 歳
2016年
男性72.14歳 女性 74.79 歳

となっているようです。

これらのことから不健康な期間は「平均寿命」から「健康寿命」を引いて、男性では8~9年、女性では12~13年となります。この期間は近年横ばいに推移しており、残念ながら大きな改善はないそうです。
平均寿命も健康寿命ものびているのに、その差が埋まってきていないということですね。

健康寿命を伸ばす(延伸)のためには、この「不健康な期間」を減らすことが肝要と述べられています。

「不健康な期間」を考えるときに「要介護」の状態かどうかというのは非常に重要なところです。

日本人全体としてみれば、介護が必要になった原因は、認知症 17.6%、脳血管疾患 16.1%、高齢による衰弱 12.8%、骨折・転倒 12.5%、関節疾患 10.8%、心疾患(心臓病) 4.5%と続き、死因として最も多いがんは数%程度だそうです。

一方で年齢によってその割合は変化し、60歳代までは循環器病の割合が最も大きいのですが、70歳代以上では徐々に認知症や骨折・転倒の割合が大きくなります。そうなると、健康寿命を伸ばすためにはどれかの病気(疾患)に絞って予防策を講じるよりは、ある程度様々な疾患を対象に(つまり横断的に)予防策を取る必要があります。

そこで、現在わかっている範囲では様々な病気の予防のためにこういうことが必要ですよと紹介しているのが、この「健康寿命延伸のための提言」だと言えます。

2017年度から6つの国立高度専門医療研究センターで、健康寿命延伸に向けたこの提言を作成する事業が始まったそうです。
それまで、ひとつの病気(疾患)に焦点を当てた予防のエビデンス(科学的にわかった証拠)をまとめてきた6つの研究期間が、それぞれの専門性を活かして協力することにより、現在までの疫学的エビデンス(科学的な調査によって重要であるとわかったこと)をまとめて、この提言を作っています。

つまり、様々な専門家が寄り集まり、それぞれの調査結果を総合して、健康で長生きするために必要なことを導き出してくれた、ということです。いわゆる一テレビ番組の健康情報コーナーとは、どう考えても格が違うという印象があります。

健康はそれぞれの体の個性や個人の生活習慣だけでなく、個人の社会経済的状況や居住する地域社会の社会的・物理的環境によっても決定されると考えられています。
そういう背景もこの提言には考慮されているようです。

緒言の結びには、このような予防に関する疾患横断的な取り組みは日本で初めての試みであり、これからも引き続き版を重ねてより完成度が高いものを目指していくとありました。

ここまで長々とご説明させていただき、やっと具体的な内容の感想や、当院に関係のある口腔ケアの項目の解説に入れるわけですが、それは次回の内容にしたいと思います。

 

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