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「つめもの かぶせもの」の劣化について

[2023.12.06]

 私は「登山」というレベルには程遠い「山散歩」くらいが好きです。
 特にお気に入りのコースは北鎌倉の駅で降り、建長寺まで歩き、建長寺の中を散策しながら、奥にある半僧坊から天園ハイキングコースに入り、獅子舞谷を下り一般道へ、鎌倉宮からバスに乗り、鶴岡八幡宮の参道や小町通りで買い物をして帰るというものです。なぜか吸い寄せられるように鳩サブレを買ってしまうのですが、この現象はなんなのでしょうか。でもよくみると和菓子屋さんだけあり、ちゃんと上生菓子も売られています。

 さて、本題です。その山散歩中に靴が脱げたような感覚がありました。でも靴は脱げていません。おかしいなと思ってよくみると、靴からソールが剥がれていました。いわゆるパカパカしている状態です。その後の話はどうでも良いのですが、その時私はこのエピソードをかぶせもの話と絡めて読み物にしようとおもました。転んでもタダでは起きぬつもりです。

 キーワードは「接着剤の劣化」です。靴底にしろ、歯のかぶせものにしろ、接着剤でついています。そしてその接着剤はつけたその日から刻一刻と劣化していくのです。「ついている状態」と「外れた状態」の二つだけが存在するのではなく、その間に長く「ついているけれど接着剤が劣化しつつある状態」期間があります。

 「ついているけれど接着剤が劣化しつつある状態」には何が起こるのでしょうか。接着剤が劣化し始めるとまず唾液が浸透し始めます。唾液=細菌が入ってくると考えてください。もしその歯が根の治療済みの歯であれば、根の先の炎症の再発の原因となります。

 つめものやかぶせものが外れて歯科医院に行った時、下がむし歯になっていて治療が必要になってしまったパターンと、むし歯になっておらずそのままつけることができたパターンを経験なさった方もいらっしゃると思います。接着剤が劣化して溶けてしまい、できたスペースに細菌が繁殖、定着し、そこで継続的な糖分、フッ化物の欠乏など、諸々の条件が揃うとつめものやかぶせものの下でむし歯が広がるということになります。

 この影響をできるだけ小さくするためにはどうしたら良いでしょうか。

いくつか挙げてみますと
・接着剤の量を減らすこと
・接着剤を劣化する要素を減らすこと
・むし歯が成立する条件を揃えないこと(むし歯の予防)
・定期検診の受診(劣化しつつある状態になるべく早く気づくこと)
このようになると思います。

・接着剤の量を減らすこと
 これは精度の高いかぶせものを選択するのが対策となります。いわゆる保険適応外のかぶせものを意味します。保険適応外というと白いかぶせものというイメージがありますが、単に、見た目(審美面)が満たされるかどうかという話ではなく、精度そのものも一般的には良くなります。これは型取りの材料や技工操作などが異なるためです。

・接着剤を劣化する要素を減らすこと
 接着剤を劣化させる要素としては、口腔内の温度の変化による接着剤の膨張収縮もありますが、歯にかかる力による劣化の影響は大きいと考えます。噛み合わせの力が強い方は、歯が欠けてきたりすり減ってきたり、かぶせものが外れる機会も多いです。治療する歯の残っている歯質の量をみて、適切な時にかぶせものへ移行すること(歯が割れることにより一気に神経の治療が必要になったり、保存不可能になることがあり歯科医師はかなり恐れています)。就寝時のマウスピースを積極的に使うことなどが挙げられます。起きて仕事をしているときや、集中している時の上下の歯の接触に気づくようにするということもとても大事です。かぶせものにするということは歯の周りを一層削るということになりますから、ちょっとその気にはなれないかなという方も実際には多いです。お気持ちもよくわかります。もちろん、無理やりかぶせものにするということはありませんから、固いものを噛むときはそこでは噛まない、マウスピースを必ず使うなどの工夫で対処していくのも選択肢の一つだと思います。

・むし歯が成立する条件を揃えないこと
 これは一般的なむし歯予防と同じです。ただかぶせものやつめものの下はブラシを直接当てられないというのが難しいところです。直接的なプラーク(細菌)の除去というよりは、砂糖の持続的な摂取をしない、フッ化物をうまく生活に取り入れて口腔内の濃度を高めておくなどの対策が重要となります。お口の中の環境を整えるというイメージです。

・定期検診の受診
 つめもの、かぶせものの状態の定期的な診査も有効です。レントゲン診査や口腔内診査で、すき間ができていたらわかる場合もあります。また噛み合わせが強く接触している場合にはその調整や、無意識に行われる歯の接触についてのアドバイスなど、できることもあります。単にすき間だけができているときは痛みはほぼ感じないので「痛みが出たら歯科にかかろう」ですと単にすき間ができている時期は通り越して、むし歯が下で広がる時期になってしまうかもしれません(もちろんならない可能性もあるのですが)。歯科医院に行くことで「歯を大切にするぞ!」という気持ちを高揚させる効果もあると思います。つまりモチベーションが高く維持されるということですね(または時間とともに低下したモチベーションを回復させる効果もあると思います)。
 ちなみに区民健診のお知らせなどは、通院がある程度滞っていた方に「歯科医院からじゃなくて(ここが重要です)区からお知らせも来たし行ってみるか」というきっかけになるという意味で大きな効果があると思います。何にせよきっかけってとても大事ですよね。毎日の生活がみんな忙しいですから、何かない限りそのまま続いてしまうということはあるかなと思います。

 長々とお読みいただきありがとうございました。毎日の口腔ケアの参考になれば幸いです。 

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