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歯があればかめるのか?(口腔機能低下症の話)

[2022.01.19]

「歯があればかめるのか」
この言葉を見て当たり前だろうと思われるかもしれません。
ですが意外とそうではない、という内容のお話です。

「よくかめる」ために必要なことをあげてみると

・歯
・かむ力
・舌や頬の細かな動き
・飲み込む力
・認知機能(食物にあわせた脳の働き)

このような感じになると思います。これらの機能に異常が出ている状態を「口腔機能低下症」と言います。
順に見ていきましょう。

「歯」は食べ物をかみきったり、くだいたりするのに大変便利です。
我々はなるべく歯を残すということを目標に日々努力しています。
また歯を失ってしまった部分については、必要であれば部分入れ歯や、ブリッジ、インプラントなどを使い、歯に代わるかめる部分を作っていきます。
食事をするにあたって非常に大きな役割を担います。

「かむ力」は見過ごされがちですが、かむことにほとんど困っていない方でもビーフジャーキーやかたいフランスパンなどを食べるとだんだん顎が疲れてかむ力が入らなくなってくることを感じるたことはあるかもしれません。
その疲れて力が入らない状態が常時続くと想像してみてください。それがかむ力が弱くなった状態です。しっかり治療された歯がたくさんあってもかむ筋肉が弱っていたら「かめる」とは言い難いかもしれません。

次に「舌や頬の細やかな動き」についてです。
食べ物を右で噛んだり左で噛んだりするときにも舌がパッパと動き、頬が連動することにより食物が口の中を正確に素早く移動できます。ものを飲み込むときにも、飲み込むための位置(のどの奥)まで舌が食物をまとめて運んでくれるのです。もし舌や頬が適切に動いてくれなければ食物が口の中を移動できないどころか頬や舌を噛んでしまいます。

「飲み込む力」は噛むとは直接関係ないかもしれませんが、飲み込む力が足りなければ、噛む力があったとしてもやはり食事がしにくいと感じると思います。
喉の奥から胃までつながっている食道は気管へ行く肺と合流しています。では普段なぜ飲み込んだ食べ物が肺にいかないかというと、食べ物を飲み込むときには肺の方へ向かう道にフタがされるからです。
食べ物を飲み込むために「ゴクッ」としているときに気管にフタがされ食べ物が胃に落ちていきます。
この時間は「0.5秒」ほどです。飲み込むことに困っていないかたでも、不意にものを飲んで激しく咳き込んでしまったことがあるかもしれません。あれは飲んだものが肺の方へいってしまったときの反射でおきていることです。
普段は、飲み込む前に舌が喉の奥に食物を集めてくれます。そして「ゴクッ」のときに食物を残らず食道へ送り込み飲み込む力で胃に落とします。
これが0.5秒以内にできれば正常な状態です。しかし「飲み込む力」が弱く、この動きがスムースにいかなくなると0.5秒以内にできなくなり、気管へ行ってしまうことがあります。これを「誤嚥(ごえん)」と言います。
「飲み込む力」もとても重要です。

最後に「認知機能」です。
これも食事に不自由ない方には想像のつきにくいことかもしれませんが、食べ物を食べるときには我々はどのような食物か、どのように噛もうかな、などをほとんど無意識に判断し、食事をしています。
たとえば「おもち」を考えてみましょう。私はおもちを食べるときに、「のどにつまるとたいへんだな」「ほかのものと一緒にかまないようにしよう」「いちどに多く詰め込んでもだめだな」ということをほとんど無意識にかんがえて食事をしています。ある程度の大きさにかみちぎって、よく噛み、飲む前には意識して飲み込みます。これが認知に異常が出ている状態だと、丸呑みにしてしまったり、おもちが口の中にある状態で他のものもお口に詰め込んでしまったりするのです。これではおもちをのどにつまらせてしまうかもしれません。単にご年配のかただから噛めなくておもちを喉につまらせてしまうのではなく、認知機能に問題があるのかもしれないということも考えておかなくてはなりません。

ではどのようにしたらよいでしょうか。

舌の力、頬の力、飲み込む力などは筋肉の問題ですので、運動により鍛えることが可能であると言われています。また別の機会に運動についてご紹介していきます。

そして今のかめる状態に合わせて食べるものを変えていくという方法もあります。かみにくくなると自然とかみにくい食材を避けて、柔らかく煮るや、細かくするなど工夫して調理なさっているということもあると思います。すべてがすべてご自身の調理で解決していこうと思うと手間がかかるということもあると思います。


今はユニバーサルデザインフードというものがあり、かむ力、飲み込む力にあわせて

容易にかめる
歯ぐきでつぶせる
舌でつぶせる
かまなくてよい

の4つにわけて、あたためても、あたためなくても食べられるような食品が売っています。当院の近所ですとイトーヨーカドー1階で売っています。肉じゃがやハンバーグなどなど様々な種類のものが売られています。またこれら食品の紹介もしていきたいと考えています。

かむ力、飲み込む力の悩みなどありましたらご相談ください。

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