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マインドフル・イーティングの勧め(日本糖尿病協会誌「さかえ」7月号より)

[2022.09.05]

記事の本編の前に少々前置きいたします。退屈な文章かもしれませんが少々お付き合いください。

当院は日本糖尿病協会「登録歯科医」になっています。

日本糖尿病協会とは公益社団法人で、全国に会員の患者と医療スタッフで作られた約1600の糖尿病「友の会」と、47の都道府県糖尿病協会があり、連携して「糖尿病の予防と療養についての正しい知識の普及啓発」、「患者・家族と広く予備群の方々への療養支援」、「国民の糖尿病の予防と健康増進のための調査研究」、「国際糖尿病連合の一員として糖尿病の撲滅を目的とした国際交流」などの事業を行っています。

糖尿病と口腔内の関係が密接であることが近年明らかになってきました。そのため「登録歯科医」という制度を作り、歯科医とも糖尿病療養の連携を行っています。

前置きが長くなりましたがそのような関係で当院には日本糖尿病協会から「さかえ」という協会誌が送られてきます。

7月号の中に「マインドフル・イーティングの勧め」という記事がありました。この会誌は一般向けの内容ですので、理解しやすく皆様の役に立つ内容です。糖尿病療養だけではなく、健康の維持、また歯科の立場からも有用な内容であると思いましたのでご紹介いたします。

あえて簡略化をしていうと「食材そのものや食事の行為ひとつひとつを意識的に食事をすると満足感が得られます」という話だと思います。

逆を考えるとイメージしやすいかもしれません。

・テレビやYoutubeなどを見ながら大好きなスナック菓子を食べていたらいつの間にか一袋食べてしまった

・上と同じ状況でペットボトルの清涼飲料水を1本飲んでしまった

・友達とのおしゃべりに夢中になり思ったより食べすぎてしまった

・考え事をしながら食べていたら食べすぎてしまった

等々です。私にも思い当たるフシがたくさんあります(笑)

これは最近特に言われ始めたかというとそんなことはなく、四書五経(「論語」が特に有名ですね)の一つである「大学」に出ている言葉があります。

「心ここに在らざれば、視れども見えず、聴けども聞こえず、食えどもその味を知らず」

私の感覚から言わせていただくと「おっしゃるとおりです」となります(笑)

大昔よりこのようなことが言われているのに驚きました。きっと古来より私も含め皆様、苦労している部分なんですね。

糖尿病といえば、食事療法、運動療法、薬物療法などが一般的です。

糖尿病について、私は歯科医なので専門外ですが食事の「コントロール」は非常に重要だと思います(単なる「制限」ではないことにご注意下さい)。

これは糖尿病に限らず、内科全体にも関わる話ではないでしょうか。歯科ももちろん関係は深いと言えます。ひいては健康全体といっても過言ではないと考えています。

ではマインドフルイーティングとはどのようなものか記事を引用させていただきながらご紹介したいと思います。

マインドフルイーティングを理解する前にまずマインドフルネスという言葉を理解しなくてはなりません。

(記事より引用)

マインドフルネスは、日本の禅の考え方や瞑想(めいそう)などをベースにしたメンタルトレーニングとして米国で広まりました。 マ インドフルネスを一言で言うと、「今を生きる」こころの状態です。 詳しく言えば、「今、ここで起きていることに意識を向け、価値判断をせず、ありのまま感じて受け止める」こころの状態をします。 マインドフルネスは、三つの要素から成り立っています。

それは、

①「今ここ」の体験に気付く (awareness)

② 瞬間の判断をしない (non-judgement)

③ ありのままに受け止める (acceptance)

です。

(引用ここまで)

この「マインドフルネス」という状態で食事をするというのが「マインドフル・イーティング」です。

開発されたアメリカでは過食症や肥満の治療に用いられているそうです。糖尿病についても血糖コントロール、糖尿病に関する悩みや不安、抑うつに対して短期的な効果がしめされているようです。

(引用ここから)

マインドフル・イーティングは、 端的にいうと、五感を総動員した食べ方です。すなわち、視覚、嗅覚、触覚、味覚、聴覚といった五感に注意を集中して「食べる」ことで、意識的に「今」に注意を向ける態度を身に付けるものです。 さらに、空腹感や満腹感といった 身体感覚にも注意を向け、そうした感覚と気分、食欲との関連への気付きを促します。このような気付きが増えていくと、ストレスに反応して食べるというパターンや、 問題のある食行動が減り、量より質を重視した食べ方が可能になります。このようなことから、マインドフル・イーティングは、食行動異常の是正や、肥満者の減量とその維持にも効果が期待されるようになってきました。

(引用ここまで)

マインドフル・イーティングの五感を総動員した食事法というのが、気になりますよね。

このマインドフル・イーティングの練習として紹介されていたのが

・レーズンエクササイズ

・ウォーターボトルエクササイズ

の2つでした。

レーズンエクササイズはマインドフルネスの状態で食事をする練習、ウォーターボトルエクササイズはマインドフルネスの状態で特に空腹感、胃の膨らみ感、満腹感を区別するためのエクササイズだそうです。

ここではレーズンエクササイズの説明を紹介いたします。レーズンエクササイズは4粒のレーズンを使います。

はじめの1粒を手に取り、そのレーズンを初めて見るかのようにじっくりと眺め、形、色、表面の凹凸を観察、手触りや弾力も意識します。手のひらに置き、転がしどのように動くか観察、次にゆっくりと鼻に持っていき、匂いをかぎ、唇に当てて感触を確かめ、ゆっくりと口に含みます。噛みたくなっても噛まずに舌の上で転がして風味、感触に注意を向けます。そしてゆっくりと噛み始めます。味の広がりや変化を観察します。味わい尽くしたと思ったらゆっくりと飲み込みます。喉を通過する感触も意識します。

次に2粒目を手に取り1粒目と同じように食べるそうです。1粒目との違いはあったかどうか。

3粒目は自分のペースで食べ、最後の4粒目は食べるかどうかは自由。

3粒目までで十分満足感が得られれば食べなくても構いません。もちろん食べても構いません。

多くの人は4粒目は食べずに「こんなにゆっくり味わって食べたのは初めてだ」と言う人も多いようです。

この記事を書いた先生はレーズンではなくチョコレートを用いて同じ訓練をするそうです。

「チョコレートがこんなに甘いと感じたことはなかった」「2粒目で気持ちが悪くなった」

という感想もあるそうですよ。ちなみにチョコレートも好きな私は余裕で4粒目もいってしまいそうで不安です。

私は、いつもの食事で、マインドフルイーティングを私なりに実践してみましたが、満足感が得られた以上に、いつも他のこと(テレビや本、スマホ、会話)に気をとらわれながら食事をしていたなと思いました。ストレスを解消するために食べるような食事のしかたも含めてです。食事は、場合によってはコミュニケーションという側面もあると思いますので、あくまでマインドフル・イーティングという考えを頭においた上でコミュニケーションを楽しむのがよさそうかなと思いました。

今の所、マインドフル・イーティングの「長期的な」血糖コントロールや減量後のリバウンド防止について

確固たるエビデンスはでていないそうですが、臨床試験から「ストレス食い」などの行動を制御する可能性を

持っているとのことです。

歯科の予防についても、砂糖の摂取量や頻度を適正化するために有用だと考えています。今後の研究結果に注目したいです。・・・と言うよりも、私の体型維持に早速役に立ちそうです。

 

 

 

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