5秒日記
「5秒日記」は古賀及子(こが・ちかこ)さんの本のタイトルです。
日記というと1日にあったことをまとめて感想など書くというものを想像すると思うのですが、まさか5秒日記を仕上げるという意味でもなさそうですし。気になりますよね。
これは古賀さんが提案している日記のスタイルの一つで、1日の中の「だいたい5秒くらい」のことを「だいたい200字くらい」で書くというものです。
古賀さんが以前に娘さんの日記のアドバイスとしてこの方法を教えたという情報発信をして、ネットでも注目されました。
以前、私のブログでも言及したことがあるかと思います(どこだかは忘れてしまいました)。
この「5秒日記」の方法を私が良いと思ったことをお伝えするために、対比として「私の小学生時代の読書感想文」についてお話ししたいと思います。
「私の小学生時代の読書感想文」とは本のあらすじを述べつつ、合間に「面白かったです」「よかったです」と感想を入れ込んでいくというやり方のことです。この方法の良いところは原稿用紙が何枚であろうと要約をダラダラと伸ばしつつ合間に感想を入れていくだけなのでなんとなく出来上がってしまうということです。
悪い点は、おそらく誰が書いてもだいたい同じような感想文になるということです。まず本のあらすじは書かれていることをまとめるだけなので、おおまかに言えば正解があります。100人いたら100人同じようにできていなければならないところです。現代文のテストと同じですね。その場面、場面でポンと感想を入れていくので、表現を凝らした感情語ではなく「面白かった」「楽しかった」というのっぺりとした最大公約数的な無難な表現になります。
この方法で、私は長期休みの宿題なのに(計画性のなさのツケが回ってきて)短い制限時間で仕上げなければならない数々の感想文を粗製濫造していたと言えます。見渡せば、私の周りの小学生たちもまあ同じような感想文を書いていたように記憶しています。「典型的な小学生の読書感想文」と言ってもいいかもしれません。「私は違う!」という小学生の方がいたらごめんなさい。
この恥ずかしい教訓のもとに私は子供達に「名前をこっそり他人に書き換えても通じるような作文は書くな」と指導しています。子供達の反応は「?????」という感じだったので、なんだかなあと思っていたところこの「5秒日記」というスタイルに出会ったのです。
私が感動した点はまず「5秒」というところです。小学生の日記ならば、起きて歯を磨いて朝ごはんを食べて友達と遊んだとか、事実の羅列で行数を稼ぎ、合間に「楽しかった」だの「残念だった」だのを入れて、いっちょ上がりです。しかし1日は、小学生であれば9時間睡眠だとして、3600秒×15時間(起きている時間)で54000秒あります(まあ夢の日記でも良いと思うのでこの限りではありませんが)。このうちのどこの「5秒」を区切るのか。それで、もう、その筆者の個性がバチんと出てきます。しかもその短い時間の心の動きを200字で書くのです。ちなみに古賀さんの娘さんは、サンダルと靴のどちらを履こうか迷った話を書いたそうです。私はその作文を素直に読みたいと思いました。こんなの面白いに決まっているじゃないですかと。朝起きて歯を磨いて朝ごはんを食べたという「事実」だけならほとんど毎日一緒ですし、そんなの日記に書くほどのことではないと個人的には思います(ついでにまた先ほどの読書感想文について言えば、あらすじなんかいらないと私は思っています。その本はみんな読んでいる前提で「あなたがどう読んだ」かを存分に書けば良いと思います。どうしても場面の説明が必要なところだけ最低限でいいのではないでしょうか)。
他にも感動した点があります。「5秒」と限定されると、その他の「(起きている)15時間マイナス5秒」はどうしているんだろうと読者の想像力が自然に働いてしまうところです。「5秒」を「200字」で表現することで、著者の個性というか価値観に自然と興味を持ちます。この1日の他の瞬間はこの人に何があってどのように過ごしたんだろうなあと考えてしまいます。ここまで読者を引き寄せられたらもう筆者の勝ちと言って良いのではないでしょうか。パラパラと忙しく宿題のチェックをしていた先生の手は止まることでしょう。
相変わらず歯科とは関係ありませんが、学生さんの日記の宿題の強力なヒントになるのではないでしょうか。
