メニュー

特別展「古代DNA ―日本人のきた道―」

[2025.04.10]

先日の休みに上野の国立科学博物館の特別展「古代DNA ―日本人のきた道―」に行ってきました。

日本人のルーツ的な話は今までもあったと思いますが、今回が今までのものと何が違うのかというと、調査手法が非常に進んだことにより、多くの遺伝情報を調べることができるようになったということらしいです。具体的には、昔はわからなかった髪や目、肌の色やどんな病気にかかりやすかったのかまでわかるようになり、また遺伝情報の共通点を探っていくことによって、人類の祖先が遠くアフリカからどのような道筋を辿って、ここ(日本列島)へ来たかということも、より詳しくわかるようになったようです。

会場へは休日の午前10時頃に到着しました。激混みというわけでもないけれど、そこそこ混んではいました。休日朝からよくこんなに人が集まるもんだな、さすが科博と毎回思います。いつもの通り子供からご年配の方々まで客層もさまざまでした。私だけではないと思うのですが、ちゃんと見たいなら一人でくるべきです(一人の時間なんかないかもしれませんが)。私は科博のフーコーの振り子だけで午前中いっぱいは少なくともワクワクしている自信があります。まあ、いわゆる「科博ガチ勢」から比べれば、私なぞ可愛いものだと思いますが(笑)

見るべきものは土器、土偶、農具、漁具、装飾品などさまざまありましたが、私が注目したのは古代人の頭蓋骨です。縄文時代から(確か)江戸時代のものまで見られました。多くの人骨の歯列が概ね綺麗なアーチを描いていて、特に縄文から古墳時代の頭蓋骨の歯列は、いわゆる歯列不正は(見た限り)ありませんでした。「矯正治療必要ないなー」と思いながら頭蓋骨を眺めていました。

多くの歯が抜け落ちている頭蓋骨もありましたが、これは歯周病によるものと推測しました。歯周病は遺伝的な要素が強いタイプもあり、あくまで個人のケアが大事なのは基本ですが、プロの介入がないと病状の進行が止められないものも存在します。縄文時代ならプロの介入はないですよね、当たり前ですが(笑)また、歯列が綺麗な頭蓋骨でも歯が1、2本ないところがあったりしました。これは博物館の解説ではむし歯とありましたが、この解説には私は納得がいっておりません。もちろん現代のような歯ブラシの習慣はないでしょうし、フッ化物を含む歯磨きペースト、フッ化物洗口液があるわけではないですが、現代のように精製された白砂糖、果糖ブドウ糖液糖、糖分×油分という最強のスイーツ群もないわけです。特に庶民なんかは江戸時代以前くらいまでは現代基準で言えばほぼ未精製といってよい食べ物しか食べていなかったのではと想像します。これでむし歯になるかなあという疑問があります。縄文時代では、歯を道具として使うこともあると聞きますし、また食べ物の中に小石が入っていたこともあったんじゃないかと思います。その小石をうっかり噛んでしまい歯が破折したんじゃないでしょうか。これは大きなくくりで言えば「むし歯」なのですが、現代のイメージでむし歯と言えば、甘いものを食べて歯に穴が開いてという感じですよね。この典型的なむし歯は縄文時代ではないだろうと思いました。誤解があったらすみません。機会があれば考古学の専門の先生に聞いてみたいと思います。

(とここまで書いて、その後実際に科博にメールを送ってみようと「お問い合わせ」から熱いメッセージを書いたのですが、ポチッと送信ボタンを押したら送れませんでした。何度繰り返しても同じ結果でした。この現象についてネットで少し調べてみたところ、私の預かり知らぬ大人の事情が絡んでいる可能性もあり、専門家にお問合せの件は保留にしました)

ここで思い出したのは「歯医者なら(ほとんど)誰でも知っている」というとそこまでもないかもしれませんが、W. A. Price博士の「食生活と身体の退化」という本です。これは1930年代に世界各地の先住民族の食生活を調査したプライス博士の研究成果をまとめたものです。

この本の要点を2点挙げたいと思います。

・博士は近代的な食生活が始まる以前の、各地の先住民族はむし歯や慢性疾患が非常に少ないことを発見しました。先住民の食生活は、地域で入手できる自然の食材をバランスよく摂取することを特徴としていました(究極の地産地消というやつです)

・近代的な食生活の特徴である精製された砂糖や小麦粉、植物油などの加工食品の普及が、むし歯や慢性疾患の増加と関連していることを指摘しました。


この説について、現代にそのまま全て当てはまるかと言われるとそうではないと思いますが、近代的な食生活となってからのむし歯の増加と歯列の乱れについてはある程度当てはまるのではないかと考えています。

精製された糖類による依存性とむし歯の増加の影響は現在でも強いと言わざるを得ません。しかし現代ではむし歯は減ってきています。一見すると解釈し難いのですが、これはフッ化物の使用と、口腔衛生の普及によるところと考えて良いと思います。

また現代の食品は口をあまり使わずとも食べられるということは、間接的に歯並びに影響を与えていると考えています。歯並びは、遺伝的な要素も強いですが、歯が生えてからどのように使っていくか(いかに口を適切に使っていくか)という機能面を無視はできないと思います(成長にあたり適切に口腔機能が発達しない口腔機能発達不全症というところに関わっていると思います)。縄文の昔のようにしっかりと噛んで、舌も頬も唇も総動員して全身で食事をするということは今ではなくなりました。それは、歯を失ってしまったり筋力が衰えてしまっていても、なんとか食べられるという良いことでもあるのですが、同時に人類の全体的な口腔機能低下をもたらしたという側面もあるのではないでしょうか。その機能低下が歯並びに影響を与えているということもあると思います。

むし歯については人類全体で見ればある程度は克服しつつも、止まらない糖類の過剰摂取は、むし歯以外の慢性疾患(例えば糖尿病などを始めとして他の全身疾患)の原因の一つにもなっているのかもしれません。むし歯を克服することにより、砂糖の過剰摂取が引き起こすかもしれない慢性的な内臓疾患への警告となる「坑道のカナリア」としてむし歯が機能しなくなったということもあるのではないかと個人的には心配しています。

色々と考察しましたが、我々が口腔の健康の維持のためにやることは特に変わりません。そして現代には、縄文時代にはいない私たちがおります。かなりこじつけっぽい展開ですが(笑)

今日からできる具体的な提案として

・砂糖の入った甘い飲み物は常飲せずお楽しみの時に

・糸ようじを歯ブラシの前に前歯の間だけでも入れてみる

この二つはコストパフォーマンスが良いのではないかと思います。

適切な口腔機能の発達、むし歯や歯周病の予防、治療は私たちがお手伝いできます。目安としては、半年に一度は歯科医院へ顔をお越しください。セルフケアについても歯科医院へ来ると、漫然とやっていた毎日のケアを改めて頑張ってみるかとモチベーションの回復にもなります。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME