口内炎、舌や歯ぐきのヒリヒリの意外な原因
「同じところにいつも口内炎ができる」「舌の横の部分がヒリヒリする」
「歯茎がピリピリする。飲み物がしみる」などのお話を伺うことがよくあります。
また「みてもらったんだけど何もなっていないので様子見て下さいと言われた」ということもお聞きすることがあります。
確かに上記の症状は、診断が難しいこともあり、私も日々頭を悩ませているところです。
口の中の粘膜や歯肉の病気の原因
1細菌感染の症状としてあらわれるもの
2全身疾患の症状のひとつとしてあらわれるもの
3原因不明のもの
4歯並びやかみあわせ、かぶせものや入れ歯の刺激によるもの
が挙げられます。
診査をしながら何を考えているか
我々はまずお話をよく伺った後に、1か234かをまず考えます。
大きなむし歯があって根の先で炎症がおきていないか、歯周炎が進行しているところではないか
ブラッシングが極端に難しいところはないか、食べ物がとても挟まりやすい状態になっていないかなどです。
さしあたり1ではないだろうということであれば、4の可能性を考えます。
歯肉や粘膜を刺激しやすいものが口の中にないかどうか
患者さんのお口の中をみながら、下の奥歯が内側に倒れていて、歯の尖っている部分が舌を刺激しやすい形になっていないかどうか、口内炎ができやすい場所に歯並びが部分的に乱れているところはないかかみあわせの関係で(特にくちびるや頬の内側など)噛みやすいような状況になっていないかどうかを診ます。
その場での判断が難しい場合は口の中の型取りをして模型上で形態を確認することもあります。
口の中は軟組織の横にすぐかたいもの(歯)がある空間ですから、舌や唇、頬の内側などは傷つけられやすいです。頬や舌を圧迫しているかぶせもの、あっていない入れ歯なども軟組織を傷つけてしまう原因になります。
傷つけやすい部分を形態修正
口の中でここが原因であろうということが強く疑われる場所があれば、なめらかになる程度に歯の形態を
修整します。もちろん歯の保存に影響が出る程度には調整しません。
特に下のあごが小さめで舌のある内側に歯が倒れていたり、歯が移動して内側に飛び出て並んでいたりすることがあります。
その場合、舌の両側への慢性的な刺激になっていることもあり、その刺激が(おおげさな表現かもしれませんが)舌がんに繋がる可能性もないとはいえません。内側に倒れていたらなんでもかんでも歯を削るわけではもちろんないのですが、繰り返し擦り傷を作っているなど疑われる場合は調整の相談をさせていただくこともあります。
余談ですが、単にピリピリする感覚とは別として、通常の口内炎であれば「およそ二週間」で何らかの治癒は得られるはずです。傷ができてから、上皮の細胞が分裂し始めその細胞が皮膚の表面まであがってくるまでの期間がおよそ二週間と言われています。二週間経って傷になんの変化もない、傷が大きくなっているなどあればすぐに歯科医院に相談なさることをおすすめいたします。健康な口の中の粘膜の状態を知っておくことも重要です(なかなか鏡でじっくり見ることはないかもしれませんが)。
ブラッシングが刺激の原因であることも
また歯ぐきのヒリヒリ、ピリピリ感に対してはブラッシングの回数や方法をお伺いして、一時的にブラシの回数や方法を変更していただき経過をみさせていただくこともあります。歯ブラシを一生懸命やろうとした結果、歯ぐきを傷つけてしまうことは、皆様が思っている以上によくあるのです。
舌をブラッシングしていて違和感が出てしまうかたもいらっしゃいます。
日中や夜間、無意識に歯に舌や頬を押し付けてしまうことにより刺激されることもあります。
上記の対応で症状が軽快することも多々あるのですが、2や3の疑いがある場合は、むやみやたらに歯を削ることは避け慎重に経過をみながら処置方針を決定していきます。
2や3が関与していると考えられる場合には高度医療機関への紹介をおすすめさせていただき、処置や対診を依頼することもあります。
もちろん、ただひとつのやり方ですべてのものが解決するというものはありません。
ここでお伝えしたいのは、口内炎やその他軟組織に出る症状が、歯や被せ物に関係していることも多くあるということ。ブラッシングは毎日の何気ないことですが、意外と粘膜や軟組織を傷つける原因となっていることもあるということです。